隠し砦の三悪人 | ちょこっとだけシネマブログ

隠し砦の三悪人

「スター・ウォーズの中には、およそ50もの映画からの引用がある」 ルーカス監督はこう語っていますが、中でも最も参考にしたのがこの「隠し砦の三悪人」です。1958年の映画ですから特撮などはもちろんないのですが、隣国の侵略に城を追われた姫が苦難の末に主家を再興するというストーリーの大筋や、次々にやってくる敵襲に、あるときは応戦し、あるときは煙に巻いたりというテンポのよい展開など、確かに似ています。ルーカス監督が尊敬してやまない黒澤監督は、観客を楽しませるスタイルをこのときすでに確立していたのですね。音響についても黒澤監督はこの頃から、映画界の設備の立ち遅れの問題を指摘し、世界の映画市場から取り残されることを説いていました。「影武者」が資金難から製作が難航していたとき、手を差し伸べたのはコッポラとルーカスです。20世紀FOXに働きかけ、東宝との共同出資でついに完成した「影武者」は全世界で絶賛され、カンヌ映画祭グランプリをはじめとする数多くの国際的な賞を受賞したこの作品は、黒澤映画としては初めてドルビー・ステレオが採用されています。1990年3月、黒澤監督は映画史上3人目のアカデミー名誉賞を受賞しますが、このときのプレゼンテーターがルーカスとスピルバーグでした。スピーチの後に感極まって2人に駆け寄った黒澤監督にオスカーを手渡すルーカスは、まさしく感無量であったのだろうと思います。

戦乱の時代、荒野を当てもなく彷徨い歩いているノッポとチビの百姓2人組み。仲良さそうにけんかしています。一方隣国の山名に攻め込まれて城を追われた秋月の雪姫と、姫を守る腹心の武将六郎太。隠し持った金塊をえさにデコボコ2人組みを仲間に引き入れ、親交のある早川領まで逃げ延びようとします。世間知らずのわがままなじゃじゃ馬だった雪姫は、逃避行の過程で初めて世間の厳しさや、底辺の者の苦しみなどを知り、人間的にも成長していくのですが、あと少しで早川領という所で山名の軍勢に捕らえられ、絶体絶命の窮地に陥ります。その時、意外な人物が雪姫たちの味方になり、無事脱出に成功します。そしてこの人物に翻意を促したのが、雪姫が怒りに任せてぶつけた言葉でした・・・。

雪姫は、この時代に似合わずスタイルが良く、曲がったことは絶対に受け入れない真っ直ぐな気性の荒さが魅力的です。六郎太は、剣の腕前もさることながら、押したり引いたり緩急自在の戦略家でもあります。デコボコのコンビは随所に笑いを誘ってくれて、いい仕事してました。古さはやはり否めませんが、ツボを十分に心得た映画だなという印象です。昔「七人の侍」や、これをモチーフにした「荒野の七人」も観たことがありますが、かなり面白かったということだけ憶えています。

「隠し砦の三悪人」(1958年)
監督:黒澤明
出演:三船敏郎(真壁六郎太)、上原美佐(雪姫)、藤原釜足(又七)、千秋実(太平)、藤田進(田所兵衛)、加藤武(落武者)、志村喬(長倉和泉)、土屋嘉男(早川方の騎馬侍)、樋口年子(百姓娘)、藤木悠(峠の番卒1)

隠し砦の三悪人

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